吉田正樹事務所の3年間 3 | さすらう犬の生活

吉田正樹事務所の3年間 3

人を雇うという事が
こんなに難しいとは思わなかった。




放送作家としての活躍ぶりを知っている訳であっても
岩崎夏海をいくらで雇ったらいいのか
そして、何をやってもらったらいいのか想像がつかない。


サラリーマンしかやってこなかった自分が
意外と不甲斐ない・・・・・


もちろんフジテレビの管理職として
新人の面接や中途採用
あるいは入社後の管理や教育は
人一倍やってきたつもりである。


しかし、自分のリスクで仕事を拵え
他人を雇うことがこんなにも不安で決断できないとは





当分は
一人でぶらぶらやって行ってもいいな
などと、呑気に構えていた僕は
岩崎君に
もう少し形になってからでいいんじゃないのかな、と
小さな声でつぶやいた。


だいたい
自分のお金から給料を払ったこともないし
どのくらいがいい感じなのか
ちっともわからないのだから・・・・






しかも、この男
信用できるのかどうかも
見当がつかない。


もちろん才能はある。
しかし
自分の部下になったこともないし
そもそも
随分久しぶりなのだ。


でも
そういえば
少し前に電話して様子を聞いたのは僕だった。


その時は
こんな展開になるとも思わず
なんか、あったら、という極めて業界的な
挨拶のつもりであったのだから。